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リアス気仙沼
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わが美しき故郷(こきょう)よ
遠くでかすかに船の汽笛が鳴っている
おばあちゃんのゴム長ぐつをはいたガッポガッポという足音がする
もう夜明けだな 畑さ行くんだな
障子の中にみるみるうちに光がいっぱい入ってくる
早く起きなくちゃ
早朝の庭が大好きなんだ
新鮮な朝 きれいなきれいな緑がたくさん
みんなでいろんな所で遊んだね
面瀬川(おもせがわ)で宝の石を探したり 空の下で手紙を書いたり
林の中は昼でも少しおっかなかったなぁ
自転車の後ろにラジカセをつんで
しろつめくさが一面に咲いている野原で好きな歌を歌ったね
どこの景色もきれいだったと思わない?
緑の種類がこっちの方とは違うみたい
素敵な小径があったなぁ あのみちはいったいどこにつながっていたのかなぁ?
そこから フェリーで大島に言ったっちゃー “太平洋の緑の真珠”
かっぱえびせんをかもめにあげて 亀山リフトに乗ってさ
ずーっと頂上に行くまで気仙沼音頭が鳴っているんだよね
ほら すごい なんて景色だ なんて青い海と山々だ
ほらほら見て見て こっちが唐桑(からくわ) こっちが気仙沼の港だ
ハマダが見える 学校が見えるよ
そして ほら あそこがわたしたちの家の方
十八鳴浜(くぐりなりはま)には まっしろい無数の小さな水晶の砂
一歩一歩あるくたびに “キュッ キュッ”と音がする
わたしたちみんな 時々 あそこに帰れるといいのにな
わが美しき故郷よー
がまんづよく しんぼうづよく
恥ずかしがりやで
決して自分のことを多くは語らぬ人々よ
かならずひとのことを心配し なぐさめをくちにする人々よ
わが美しき故郷よー
風にきらめく波上の光は いったいいくつあるんだろう?
きらきら きらきら 数えきれない 数えきれない
あまりにも空がきれいで
夕暮れの空がさ むらさき色とバラ色と きみどり色と水色と
空の絵の具をいっぱいつかってつくったみたい
「今日の日を忘れないようにしよう」なんて言って みんなで日付を覚えたのに
誰かいま覚えているかな? あれはいつの何月何日だったんだろう?
わが美しき故郷よー
受難の民よ
寡黙で哀しき魂よ
願うーこの世は壮絶な苦しみでいっぱいだ ずっとずっとそうだったんだ
祈るー今ここに自分が在るのはたまたまだ たまたま助かっているだけだ
叫ぶーでも どこに? どこに叫べばいいのか分からない
すべての希望を絶たれた人々
全身全霊で助け合わなくてはいけないのだ
そのために生かされている
この世はずっとそうだったんだ
遅い 遅い いつでも遅すぎる
こんなことになるまでそれをわからなかったわたしの愚かさを
どうかお許し下さい
わが美しき故郷よー
わたしたちは ひとりひとりが愛の自家発電機なのだ
だれかが手を差しのべてくれれば
優しい言葉をかけてくれれば
それが動いてやってゆける
あなたもわたしも動物たちもみんなみんな大切なのだ
わが美しき故郷よ 人々よ いたいけな動物たちよー
正しい道を教えてくれてありがとう・・・つらく険しい長い道のり
目に浮かぶのは ふるさとの緑と青い海
聴こえてくるのは懐かしい人々と鳥の声
天上の色彩が降り注ぐ永遠の子供時代
忘れたことはない
決して 忘れることはない
畠山美由紀
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